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昔話の桃太郎を書こうとしたら、どう考えてもタイトルは『モモタの災難』になっちゃった…。

昔々、あるトコロに、オジイとオバアがおりました。

オジイは山に芝刈りに、オバアは川へ洗濯に行きました。

オバアが川で洗濯をしていると、上流から、大きな桃が、ドンブラコーと流れてきました。

こっから少しハナシはハブいて、その桃を持って帰り、その桃から男の子が飛び出し、その子はモモタと名付けられ、オジイとオバアの子として育てられる事になり、十数年が過ぎました。

モモタが通う、私立鬼ヶ島高校の校舎裏では…。

モモタ 「ってコレがオレの生い立ちなワケよ。」(タバコふかしながら)

キジ 「マジパネェっす!モモタさん、マジでハンパないっすよ!」

サル 「めちゃくちゃ壮絶じゃないッスか!」

モモタ 「だろう?やってらんねっつの。何だよ桃から生まれたってよぉ!」

イヌ 「つか、モモタさん、イッコだけ言っていいッスか?」

モモタ 「何だイヌ。」

イヌ 「モモタさん…。ソレ…桃から生まれたっつか…。」

イヌ 「桃から『出てきた』ッスよね?」

モモタ 「!!!」

サル 「い…言われてみりゃそうだ…。」

キジ 「イヌ、マジパネェよ…。」

イヌ 「そもそも、桃は果物であって、何かしらを生む物ではない。つまり、何等かの方法で、モモタさんが桃に監禁されていたのを、オバアが助けてくれたって事じゃねぇですか?」

キジ 「マジ…パネェ…。」

イヌ 「つまり、オバアはモモタさんの…。」

モモタ 「つぅ事は、オレを桃に監禁しやがったクソヤローが居るって事か!!」

イヌ 「え?そっち?まずは命の恩人のオバアに感謝するクダリでしょ?」

モモタ 「しかも当時はオレは赤子だったって言うじゃねぇか…」

キジ 「赤ちゃんを桃に監禁するなんざ、マジパネェな。」

モモタ 「チキショウ…。一体誰がそんなマネを…。」

オバア 「ワシじゃよ。」

モモタ 「なっ!?オバア!!一体なぜココに!?」(慌ててタバコを消す)

イヌ 「あ、オバアさん、チーッス。」

サル 「チーッス。」

キジ 「マジパネェッス。」

モモタ 「つかオマエラ挨拶してる場合か!」

オバア 「山奥に住む、天才科学者の、ゲンさんがのぅ、ふとした拍子から、スーパーヒューマンを作り出してしもうたんじゃ。」

イヌ 「スーパーヒューマン…。超人的な能力を備えた人間の事か…。」

オバア 「いかにも。ただ、ソイツは強くなりすぎた…。」

キジ 「マジ…パネェなオイ…。」

オバア 「困ったゲンさんは、そのスーパーヒューマン、略してスーマンを、退化させる事にしたんだ。」

サル 「えっ何で?退化させる事が出来るんなら、破壊しちまえば…。」

イヌ 「黙れサル。ソレを言ってはオハナシにならん。」

オバア 「そして、ゲンさんの技術により、巨大化させた桃に、その退化させたスーマンを入れたのだ。」

モモタ 「だから何で桃なんだよ!!」

イヌ 「ソレだけの技術を持ちながら…。」

オバア 「ゲンさんは、桃が好きだったからじゃ…。」

サル 「え?そんだけ?」

オバア 「ツマリ…モモタや…。ゲンさんが一番大好きな桃にオヌシを入れた事…。そして、破壊せずに川に流した事…。生みの親のゲンさんの…他ならぬ…愛が詰まっておるのじゃよ…。」

オバアの頬を大筋の涙がつたう…。

モモタ 「んなワケねぇだろクソババア。」

オバア 「泣き落とし作戦は通じなんだか!」

イヌ 「つまり、その流した桃を、オバアさんが拾うまでは筋書通りだったと。」

オバア 「いかにも。そして、ウチで真っ二つにしようとしたワケじゃが…。」

サル 「結局ヤるんじゃん。二度手間じゃん。」

モモタ 「何だよ二度手間って!オレの命がかかってんだぞ!!」

オバア 「桃の空洞を大きく作りすぎておったようで、避けられてしもうたんじゃ。」

キジ 「パネェ…パネすぎる…。」

オバア 「ソコにオジイもおってのう…。ソレまで子供に恵まれなかったワシらに、天からの授かりものだとか、一人で勝手に有頂天になりおったもので、再度改めてトドメを刺す事も出来ず…。」

イヌ 「なるほど、オジイとオバアが子供に恵まれなかったのも、ソコにはオジイに対するオバアの愛が無かったから。オバアは、ゲンさんにゾッコンフォーリンラブだったからか…。」

キジ 「イヌ…マジパネェよ…。」

オバア 「そう、オジイとは、財産目当てで一緒になったんじゃが、結婚する時のイザコザで、オジイの財産は無くなってしもうてのぅ…。マジサイアク。」

サル 「いやアンタ、ホント最低な人間だな。」

オバア 「あっ違う、今のナシ!イヌの誘導尋問に引っかかっただけだから!」

サル 「誘導されてんじゃねぇか!」

オバア 「黙れバナナ!!!」

サル 「えぇ〜〜〜〜〜…。」

オバア 「モモタや…よく考えてみぃ…。桃の空洞が大きく作られておった事、そして、ワシが、なるべく桃の端っこを切ろうとした事、それら全ても愛なんじゃよ。」

モモタ 「オマエ自分が何言ってっか分かってんのか?」

オバア 「ココまで言うても聞かぬなら仕方ない。」

オバアは深く息を吸い込み、体中にチカラを込め始めた。

オバア 「今は亡きゲンさんの遺作!!マッスルバーサン!!!」

サル 「イツの間にか死んでんのかよ!!」

オバアの体は何倍にも膨れ上がり、まるで巨人のようになった。

イヌ 「ふむ、巨大化しても服が破れぬ素材になっているとは。ゲンさんも、オバアの女性としての恥じらいは守ってくれたようだな。」

キジ 「色んな意味で、イヌ、パネェよ。」

モモタ 「え?なにこれ?オレ、オバアと戦う流れ?」

サル 「どう考えても、ソッスね。つか、こっちの意思関係なく、オバアはヤる気ッスよ。」

モモタ 「で?オレがスーマンなの?」

サル 「何でオレに聞くんスか?」

モモタ 「いや、イヌは最早天才気取りじゃん?キジに至ってはパネェしか言わねぇじゃん?」

イヌ 「話の流れからして、モモタさんがスーマンなのは、ほぼ間違いないでしょう。しかし、退化させられている以上、ドコかで能力を覚醒させる必要があります。」

モモタ 「ホラァ〜〜…。コイツ、ノリノリじゃぁ〜ん…。」

イヌ 「何か持ってないのですかモモタさん!伝説の宝玉とか、父から譲り受けし首飾りとか、母の形見の手鏡とか、隣の山田さんの自家製無農薬キュウリとか。」

モモタ 「え?ツッコむトコが多すぎて、逆にどうしようもねぇょ…。」

オバア 「むふぅうう〜〜〜。むっふぅぅぅううぅぅぅ〜〜〜〜。」

サル 「オバアさん、めっちゃ変な呼吸してるんスけど…。」

オバア 「マッバ(マッスルバーサン)パァーーーンチ!!」

上空から叩き落とされるように放たれたマッバパンチ。

モモタ 「いぎゃああああああーーーーーー!!!しぬうううぅぅぅっぅーーーー!!!」

次の瞬間、鈍い音と共に、マッバパンチはモモタの目の前で動きを止めていた。

モモタ 「へあ?た…助かったのか…?」

その、モモタとマッバパンチの間に、小柄だが、ガッシリした体格の人物が居た。

サル 「あっ!!キンタはん!!」

キンタ 「なに、ちょいとマサカリ探しの旅の途中でよ、マブダチがピンチだったもんでよドスコイ。」

モモタ 「キンタ!助けてくれたんだな!」

キンタ 「あたぼうよドスコイ。」

そしてキンタは、オバアの方を向き、腰を深く落とした。

キンタ 「はっけよい…。」

静かに目を閉じるキンタ。

そして、息を短く吐き、キンタが目を見開いた瞬間…。

キンタ 「のこったぁ!!!」

目にも止まらぬスピードで、キンタはオバアの足に突進した。

その衝撃を受けたオバアは、校舎に向かってバランスを崩した。

キンタ 「アカン!このままじゃ校舎がドスコイになってしまう!!」

サル 「ドスコイってどういう状態だよオイ。」

と、グラリと傾いたオバアの体だが、暫く経っても倒れる気配が無い。

キジ 「マジパネェ…。」

その校舎の屋上に、キラリと光る竿を構えた何者かが立っていた。

ウラタ 「相変わらず後先考えないねェキンタくん。」

キンタ 「こりゃウラタどん!」

サル 「つかイヌが喋らなくなってんな。」

ウラタ 「せっかく手に入れた玉手箱、どうもウサン臭いんで、速達で竜宮城に送り返した帰りに寄ってみたら…。」

ウラタが竿を一振りすると、オバアは運動場の方へ倒れた。

ウラタ 「モモタくん、オッシコ漏れてますよ。」

モモタ 「え?あぁこりゃアレだよ雨だ。局地的に豪雨が降ったんだ。」

ウラタ 「あぁソレは失礼。」

キンタ 「ほいでは、マサカリ探しの旅の途中なもんで、またなモモタどん。」

ウラタ 「僕も帰って女の子を釣りに行かなければ。」

モモタ 「えっ?ちょっと待ってよ。流れ的に、こっからオバアをミンナで倒すパターンじゃねぇの?」

イヌ 「ザコどもは放っておきましょうモモタさん。オバアが気絶している今こそ、能力覚醒のチャンスです。」

サル 「イヌ復活。」

キジ 「パネェ…超帰りてぇ…。」

イヌ 「さぁモモタさん!!」

オバア 「ううぅ〜〜〜ん…。」

サル 「やべぇ…オバアが…。」

オバア 「オバア超進化!!!」

イヌ 「なにぃ!!??コレ以上進化するだとおぉぉぉおお!!!」

サル 「もうオバアとイヌが戦えばイイんじゃね?今時、小学生でもこんな熱い遊びしねぇぞ。」

オバア 「遊びではないわ!ふんんんんぬぬぅぅぅぅっぁあああああ!!!!!!」

すると、オバアの姿は縮み、常人と変わらないくらいのサイズになった。

イヌ 「なっ…。」

モモタ 「ハッ!縮んでんじゃねぇかよ!!何か?洗濯のしすぎか!?あぁ!?」

イヌ 「コレはマズい…。パワーも格段にアップしている…。言わばフ○ーザの最終形態…。」

オバア 「ほぉっほっほ!」

次の瞬間、オバアの体はキジの前に移動し、更にキジの腹部深くにオバアの膝がメリ込んでいた。

キジ 「マジ………パ……ネェ………。」

キジはフッ飛ばされて学校の壁に激突し、気絶した。

オバア 「さて、スーマンとやらの実力、見せてもらいましょうか…。」

モモタ 「どっちかっつぅと、オマエがスーマンじゃねぇかよ…。」

そういうモモタの足は震えている。

サル 「くっそ!モンキーーーーック!!!」

サルは跳躍し、オバアに向かって蹴りを放った。

だが、その足は、いとも簡単にオバアに捉えられ、オバアの頭上で数百回振り回されたのち、サルは地面に叩きつけられた。

サル 「ガハッ…。」

モモタ 「ガチじゃん…。コレ…ガチでヤバいヤツじゃん…。そうだ!イヌ!!おいイヌ!!!」

イヌは、全力疾走でモモタから離れている最中であった。

モモタ 「あ、そうなっちゃいます?」

オバア 「仲間を見捨てるとか、ババアの風上にも置けんヤツよのう…。」

イヌ 「オレ、ババアじゃねぇし!!イヌだし!!」

オバアは一瞬でイヌの進行方向に移動した。

イヌ 「うわああぁぁぁ!!!」

急には止まれないイヌに向かい、オバアは足を後ろ高く振り上げ、イヌに向かって振り抜いた。

ドッ…という鈍い音と共に、イヌの体は大空高く舞い上がった。

オバア 「さて、残るはオマエだけよモモタ…。」

モモタ 「有り得ねぇ…。」

オバア 「トドメよスーマン!!!」

オジイ 「モモタ!コレを受け取れい!!」

ドコからともなく現れたオジイが、モモタに向かって投げたのは、一振りの刀であった。

オジイ 「その伝説の刀、デバボウチョウで戦うのじゃ!」

モモタ 「えっムリ…。」

モモタは、一応刀を受け取ろうとはしたが、うまく受け取れず、刀はモモタの手からハジかれ、近くに落ちてしまう。

その間にも、オバアの攻撃は、モモタに向かってきている。

オジイ 「ええい!オジイ瞬間移動!!!」

一瞬でモモタの目の前に移動したオジイが、オバアの一撃を受け止めた。

モモタ 「あのさ、もはやスーマンが一般人みたいな扱いなんですけど…。」

オバア 「おのれオジイめ…。」

オジイ 「このクソババア!ワシはトックにオマエと山奥のゲンとの仲に気付いておったわ!!」

オバア 「ソレでよくワシと夫婦を続けておれたのう…。」

オジイ 「モモタを…授かった…からじゃ…。」

オバア 「!!!」

オジイ 「この子を授かり、少しはオマエも変わってくれるかと期待したが、ムダだったようじゃな…。」

オバア 「オジイ…。」

オジイ 「ってウソだよん!オジイ全力パンチ!!!」

オジイのマッハの拳が、オバアの腹部にメリ込んだ。

オバアは、悲鳴をあげる暇すらなく、遥か彼方へフッ飛んでいった。

オジイ 「モモタ…。女にだけは…気を付けるんじゃぞ。」

そういうと、オジイは、落ちてた伝説の刀を拾って、モモタに背を向けた。

オジイ 「コレ、魚をサバくために必要なんじゃよ…。」

そう言って、オジイは少し恥ずかしそうな笑みを浮かべ、去っていった。

モモタ 「え?コレ…終わっちゃったカンジ…?」

そう言うモモタの頬を、ヒュンッ!という音と共に何かがカスメた…。

モモタ 「いって…。」

モモタが頬に手をやると、細長い傷が出来ており、血が滲んでいた。

モモタ 「なっ…。」

モモタの視線の先には、俗に言う、お地蔵様が、笠を手に、立っていた。

ジゾウ 「オマエか?」

モモタ 「あぁ!?」

ジゾウ 「オレらは、寒さを楽しんでたのに、恩着せがましく笠を被せて自己満足入りまくりで去っていったのは、オマエか?」

モモタ 「え?」

気がつくと、モモタの周囲を数百体の地蔵が囲んでいた。

ジゾウ 「このクッソ寒いのに、ハゲあがった頭に雪を浴びるという喜びを台無しにしおって!!」

モモタ 「え?ソレってただのMでしょ?」

ジゾウ 「『寒かろう』とかドヤ顔で被せていきおって!!余計な世話をおぉぉぉおおおおっ!!木っ端微塵にしてくれるわぁああ!!」

モモタ 「いやああぁぁぁっぁああああ〜〜〜〜〜〜!!!」

モモタの災難は、これからも続くようだ。