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データ移行につき

〈61〉

 シャンディが自分を最後の生け贄にして、オルガのシステムを破壊した。

 ガフはそれをもち出して下らないシステムを完全に破壊した。

 それはもしかしなくても、人類の破滅を早めるだけの愚行でしかなかった。だが、必死に生きて、必死に死んで、託した。託された者は、それを知ってか知らずか、実際には大きな流れはおろか託されたことすら知るよしもないまま、しかし知らず知らず負けないと必死に生きていた。

 そうしてオルトース、正確にはミズチの背骨に命を吸い付くされる前に、兄は全てを知れた。今となっては命を吸われる心配もない。

 それどころか現在、背骨は有り余る供給を受け、満たされていた。

 「命は一つしかない」

 真理がガフの口をついて出た。

 意図しない、しかし何故か言わねばならないような気がする言葉だった。

 「そうか、大事になんだね」

 真理のあとに来るにはあまりに陳腐で、つまらない言葉。

 それより大切なものを見つけたから出る言葉。

 命は一つしかなくても、“繋ぐことができる”ということを。

 それが繋がるから大事なのだ。大事に思って繋げば、ちゃんと繋がっていく。

 意志をもって。

 「うわーん、ニャンニャンだいぶ無言で寂しかったニャン。そこんとこの繋ぎが欲しいニャン!」

 口を開けばガフには意味不明な言葉の多い何とか。

 そんなものすら、否、到底理解の追いつかない大きな流れすら或いは繋げば一つにできるのではないか。

 彼はそんな自身にもよくわからないことを考えていた。

 「いいでしょう。貴女を喰らって繋ぎます」

 「なんかこの人物騒なこと言ってるニャーン!?」

 弱腰の雰囲気を出していても何とかがガフたちにとって敵であることに依然変わりはない。

 倒すなら、一気にためらいなく終わらせるべき、と戦士的直感が告げる。

 「燃えなさい」

 何とかの立つ地面が突如、爆発する。正確には、地面から熱と共に飛び出した獰猛な生物の顎を思わせる岩が、何とかに喰らいつこうとしていた。

 何とかは勘が良いのか、一瞬早く飛び退いている。

 「イヤ〜服が燃えてるニャーン!?」

 イヤイヤとクネクネしながら飛ぶ何かに知らぬ顔でガフは、懐中時計から素早く十の火の玉を放つ。

 「ニャー!?手加減を知らないのかボーイ!?」

 クネクネした動きで全てを避けられたが、最後の玉に隠れて放たれたものはさすがに気付かなかったようで、顔面に直撃。だというのに、たいしたダメージにはならなかったのだろう。落下した何とかは、すぐさま起き上がった。

 「もうヤメだ、今すぐコロス!」

 「いえ、もう終わりです」

 天井から巨大なマグマ球が落下し、何とかを灼いた。その周囲を炎の壁が多い熱はおろか敵すら逃がさない。

 「手順こそ違えど、四方に逃げ場を作らない陰陽師の技。なるほど、勉強になりました」

 厚い岩壁を溶かすだけの熱に耐えられる生物など、いない。たとえそれが妖魔であろうと。

 「耐えられると困るので、もう一度」

 今度は炎で厚い壁を作ったのち、下からマグマ球で灼く。

 これでもう、完璧に逃げ場はない。耐えることすら不可能だろう。

 「こんなもの…こんな、こんな、こ…ギャニャーン!?」

 どうにか脱出するため、妖魔本来の姿と使う予定だったのか。そうなる前に追加でマグマ球を上下に投入し、完全に灼き尽くした。

 チリすら残っていないだろう。

 「せめてもの慈悲です。二度と私たちの前に貴女が現れぬよう」

 燃え尽きて何も無くなった空間に向けてガフが呟く。

 「勝ったな」

 少女然とした声。リサがガフの眼前に飛び降り、言った。

 「勝利は重要ではありませんでした。それよりも、遅い登場ですな」

 「そうか?それよか、あたしが開けた穴から外に出れるぜ。先に出てクリアリングしといてくれ」

 何がなんだかよくわからないままに「わかりました」とガフは跳んで壁を蹴りつつ上へ行く。

 それを見届けてからリサは「年増、てめーの力、もらうってやる」と言い放つ。

 「さっきの見えなかったニャン?あれで勝ったと思ったら大間違いニャン」

 何とかは倒されていなかった。

 この世ならざる、とはこのことか。何の造作もなかったかのように彼女はリサの背後から現れた。

 「ああ?チョーシこいてんじゃあねえぞ」

 ほぼ反射の速度で、リサは射撃していた。

 「当たらないニャ…」

 「ザコが……」

 何とかの身体は凍り付き、瞬く間に光の粒になってリサに吸収。

 「1モーションで出来ることまでしか反応できねえからやられんだよ」

 この空間を作り出した鵺の能力、ガフの宝玉すら何とかは支配していた。倒さねば、ここからは出られない。

 「勝つより大事なことね…」

 ひとりごちる。まだその意味は彼女にわからない。

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